宵っ張りラジオステーション

夜更かしさん向けのラジオ放送局!

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【眠れない夜のお供に】哲学的泥男「スワンプマン」のお話


みなさんこんばんわ!

 

かなり暖かくなってきましたね!

花粉症で苦しんでいるみなさん、ドンマイです。

 

 

宵っ張りラジオステーション

メインパーソナリティーを務めるガガーリンさんです。

 

サブのパーソナリティーなんていませんし、

そもそもラジオのパーソナリティーではなくてただの会社員です。

調子に乗ってすいませんでした。

 

 

さて、夜共シリーズは第2回目となりました。

 

突然ですが、みなさんは「自分が本当に他でもない自分である」と

言い切ることはできるでしょうか?

 

人間の体には60兆もの細胞が存在するといわれていますが、

この細胞も常に分裂を繰り返し、どんどん新しくなっていきますよね。

 

 

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人体を構成する部品が入れ替わっても、

私たちは自分を自分だと間違えることなく生きています。

 

だとしたら、私たちのアイデンティティとはどこに存在するのでしょうか?

 

今夜はそんな人類の永遠のテーマともなりうる話を、

「スワンプマン」という思考実験をもとに考えていこうと思います。

 

 

あったかいコーヒーでも準備して、ゆっくりしていってください。

 

 

  

 

 

泥から生まれた男

あるところに写真家の男が暮らしています。

名前をガガーリンとしましょう。年齢は24歳です。

体重は秘密です。

 

ガガーリンはこの日、撮影のために山に登っていました。

 

この日は朝から雲行きが怪しく、昼を過ぎると少し雨が降り始めました。

ガガーリンは14時ごろ撮影を切り上げ、下山を始めました。

 

 

山の中腹に差し掛かったころ、

1つの雷がガガーリンに直撃し、体をドロドロに溶かしてしまいます。

 

その直後、別の雷がドロドロになったガガーリンに再び直撃します。

 

 

するとすさまじい化学反応によって、

ガガーリンそっくりの人物「スワンプマン(和訳すると泥男)」を作り出しました。

 

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スワンプマンはガガーリンと細胞の作りがまったく同じで、

容姿も、声も、記憶も性格もすべてが同一人物です。

 

 

スワンプマンは当然のように自宅に帰り、

いつものようにブログを書いて1日を終えるのでした。

 

 

ガガーリンとスワンプマンは同一人物といえるのだろうか

この思考実験は、哲学者のドナルド・デイビッドソン

1987年に考案したものです。

 

みなさんはこの話を聞いて、

ガガーリンとスワンプマンは同一人物だと思いますか?

 

 

(シンキングタイム)

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この思考実験の答えを導くには

同一人物というものの基準を2つの解釈でひも解く必要があります。

 

一つは物質的な解釈、そしてもう一つは意識的な解釈です。

 

 

1.物質的解釈

体を構成する物質がまったく同じであるから「同一人物」だと言えます。

 

 

2.意識的解釈

ガガーリンはこれまでの24年間を生きてきました。

 

対してスワンプマンは雷が直撃したときに生まれた人物です。

つまり雷が直撃する前日は存在しないのです。

 

つまり持っている記憶が同じであろうと、まったくの別人物と考えられます。

 

 

ドナルド・デイビッドソンの解釈

思考実験の考案者である、彼の解釈は一応の正解と呼べるものになるかと思います。

 

・体を構成する物質や記憶が同一であるだけで、

 同一人物と判断するには不十分である。

 

・さらに意識面から客観的に見ても、

 連続した存在を証明できなければならないと解釈しました。

 

このように、ドナルド・デイビットソンは

2通りの解釈からガガーリンとスワンプマンは別人であるとしました。

 

 

つまり、この思考実験は

「私たちのアイデンティティは、体を構成する物質ではなく

 その人の生きてきた記録やその時々の意識などのすべてである。」

ということを訴えているようです。


 

閑話休題

ガガーリンとスワンプマンが別人である”

これがこの思考実験の答えです。

 

 

たしかにスワンプマンは雷に打たれるまで存在しませんでした。

でもガガーリンとまったく同じ記憶をもっていますよね。

 

 

ある日突然、分身のように生まれるもの

ここでピンときませんか?

 

ぼくたちはそういった分身を意識的に生み出しています。

そしてその分身を自分の一部と認識しています。

 

 

さて、それはなんでしょう?

 

 

 

現代における解釈はどうだろうか

一応は、ガガーリンとスワンプマンは

全くの別人であるとの答えが提示されています。

 

はたして現代においてもこの解釈は通用するでしょうか?

 

 

現代を生きている私の解釈はこうです。

「同一人物でなければ困る」

 

 

私たちは現代社会を生きる上で

自分のスワンプマンを無数に生み出しながら生きています。

 

 

 

・日ごろ利用するSNSのアカウント

・会社や学校に登録されている個人データ

・銀行口座

・健康保険証や運転免許証

・指紋や静脈や光彩、顔などの認証用データ

・ゲーム内で作成した自分のキャラクター

 (キャラクタークリエイト)

・他人から見た自分の印象

 

ほかにもたくさん、私たちは自分が持つ記録や能力、経験を

データとして様々な形で残しています。

 

 

これらは、私ではありません。

しかし、私の意識や記憶、能力つまりアイデンティティを担っています。

 

しかもこの私より私を詳しく説明してくれるものたちは

私と同時に生まれたわけではありません。

 

銀行口座を開設したとき、スマートフォンを購入した日、

ゲームを始めた日、その時に生まれた私のアイデンティティ。。。

 

つまり、スワンプマンです。

 

 

銀行口座に私のデータをたくさん入力しているのに、

いざお金をおろそうとしたら、

「この口座はあなたのスワンプマンであり、同一人物ではないので利用できません。」

なんてことになったら困りますよね。

 

 

このように現代では、自分のアイデンティティ

自分以外のものに生み出すことが当たり前になっています。

 

 

この思考実験が考案された1987年にはまだまだこれが当たり前ではなかったのでしょう。

 

この思考実験が

「私たちのアイデンティティは、体を構成する物質ではなく

 その人の生きてきた記録やその時々の意識などのすべてである。」

 

ということを訴えているのであれば、

 

現代における解釈はなおさら 

スワンプマンは私の一部であると言い換えられます。

 

たとえオリジナルの自分が雷で死んでしまったとしても、

銀行口座や運転免許証は私の存在を証明するものとして残り続けます。 

 

 

 

バーチャルリアリティーの世界ではどうだろうか

 

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バーチャル空間の自分はスワンプマンそのものだ

 

これはバーチャル空間に存在するライブハウスです。

空想のものではなく、実際にここでライブが行われています。

 

アーティストも、観客もすべての人がVRゴーグルを通して

この世界にログインして自宅にいながらライブを楽しむことができます。

 

バーチャルライブハウスにいる全員が実体ではありません。

リアリティ空間の自分がバーチャル空間のアバターを操作しています。

 

ぼくたちはバーチャル空間の自分を”自分”として認識しています。

 

自分の分身にアイデンティティ(記憶、経験)を持たせているわけです。

まさにスワンプマンです。

 

 

 

映画「アバター」で描かれたスワンプマン

 

映画「アバター」では自分の意識を他の物体に移植し、

あたかも自分が他の星の生命であるように生きる様が描かれました。

 

 

アバターに移植されたとき、

体を構成する物質がまったく違っても意識は自分のものです。

スワンプマンとは異なっていても本質は近いと思います。

 

 

映画中で登場人物たちがまったくの別人であると描かれているでしょうか?

 

 

答えはNOですよね。

 

 

 

現代におけるこの思考実験の答えは

「スワンプマンは同一人物である」です。

 

わりとすんなりと受け入れられる人は、結構多いんじゃないでしょうか?? 

 

 

 

 

さて、この傾向は近年かなり顕著に現れています。

 

バーチャルYouTuberをご存じでしょうか?

バーチャル空間に自分のアバターを作り出して声を重ねる様は映画「アバター」の世界が現実になったといっても過言ではありません。

 

 

ちなみにぼくはキズナアイちゃん推しです。

かわいいです。

 

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エンターテインメントの市場では、バーチャル空間でのライブやゲームなど

様々なものが展開されています。

 

バーチャル空間に自分のスワンプマンを作り出すことは

もはやエンターテインメントの枠だけでは収まらず、

ビジネスの世界をも席巻していきます。

 

 

IT業界ではバーチャル空間の開拓に

しのぎを削る企業も膨大にあります。

 

 

このへんは次週の記事で詳しくお話したいと思っています。

 

 

終わりに

スワンプマンという思考実験から、

自分のアイデンティティを考えるきっかけになったでしょうか?

 

私は自分のアイデンティティ

自分の内に存在する経験や感情、自分が作り出したスワンプマンたちの

すべてであると思います。

 

そして自分らしく生きるということは、

自分から切り離したスワンプマンに惑わされず、

自分だけの内なる声に従うことだと思います。

 

 

思考実験を紹介するつもりが、

説教じみたことを話してしまってすみません。

 

これを機に、みなさんもスワンプマンに惑わされず

自分について考えてみてはかかがでしょうか。

 

 

さて、今週はこのへんにしておきましょう!

次週は「バーチャル空間の開発を急げ!」というテーマでお届けします。

 

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