【遺伝子特集】遺伝子組み換えって??
皆さんは「遺伝子組み換え」、「ゲノム編集」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
どちらも遺伝子に関する技術です。
前者は、特に主婦の方なら日常的に耳にすることが多いかもしれません。
スーパーに並んでいる食品には「遺伝子組み換えではない」といった文言がよく見られます。つまり日常的に遺伝子という言葉は耳にしているはずです。
意識的に遺伝子組み換え食品を避けて買い物するようにしている方もいらっしゃるとおもいますが、その意味を本当に理解していますか?
遺伝子工学という分野は、遠くに見えて実はぼくたちの生活にすでに浸透しているといっても過言ではありません。
さらに近年、「ゲノム編集」というこれまでの遺伝子研究の常識をひっくり返す成果が発表されました。
ゲノム編集とはどんな技術なのでしょうか?
そしてこれからぼくがお話しようと思っているのは、ゲノム編集が世の中にもたらす影響についてです。
話が長くなってしまうので、順を追って説明していこうと思います。
今回は特に「遺伝子組み換え」に注目してお話していきます。
これらの技術は、これからの時代を生きていく上で、避けて通ることのできない重要なテーマになると考えています。
正しい知識を身に着けて、自分なりの判断・考えを持つための材料になれば幸いです。
なぜ遺伝子を操作する必要があるのか
遺伝子研究ときくと、なんだかマッドサイエンティストが人体実験をしている映画なんかを思い浮かべてしまいそうです。
遺伝子研究を悪用しようとするマッドサイエンティストの図。
ぼくの好きな映画「キャプテンアメリカ」にもそんな話がありました。
この映画は病弱だった青年が特別な遺伝子を注入され、強靭な肉体を手に入れるところから物語がはじまります。
こうした話ばかりしていると、遺伝子研究が恐ろしく、自分とは関係のない世界のことだと考えてしまうかもしれませんね。
しかし、遺伝子研究はもっと生活に密着するところにあって、一般人の間でも議論されなければいけないことだと、ぼくは考えています。
遺伝子研究が必要とされる理由は大きく2つあります。
1つめは病気に関することです。
先日の記事でウーパールーパーはガンにならないということをご紹介しました。
(我が家のウーパールーパーの写真も載せていますのでぜひ!)
あれだけ細胞分裂のスピードが速いのに、がん細胞は増殖しないそうです。謎は深まるばかりですが、遺伝子情報からヒントを得るために日夜、研究は進んでいます。
ガン治療に関する研究はすでに、遺伝子レベルの研究に発展しています。
ガンの他にも、現代の医学では不治の病とされているものはいくつかあります。
もしこれらの病気が遺伝子レベルの治療でなければ完治できないとしたら、間違いなくぼくたちは遺伝子研究のいっそうの発展を願うでしょう。
2つめは食糧問題です。
現代において非常に大きな問題である人口の増加。2050年には人口は90億人を突破するといわれています。もし本当なら、食糧は確実に不足していきます。
すでに食品業界では、遺伝子研究を利用した農作物の流通が常態化しています。
遺伝子研究を農業に利用することで、食糧問題をどこまで解決できるかは未知数ですが、研究を進めることで解決への糸口が見つかるはずです。
栄養価が高く、それでいて安価な食品が大量に生産されれば、食糧難でない日本人のぼくたちにとっても、そのほうがいいに決まっていますよね。
このように遺伝子研究はぼくたちの生活に直結しています。
遺伝子を書き換える技術である「遺伝子操作技術」に、革命が起きました。それが「ゲノム編集」です。
京都大学農学研究科の木下助教はゲノム編集についてこう語っています。
「従来なら100年かかる遺伝子操作が、数年で実現できるようになった。」
遺伝子研究がこれから数年で飛躍的な進化を遂げることが予見されました。
同時にぼくたちの生活により密着していくことになるでしょう。
だからこそぼくたちもしっかりと知識と見解を持たなくてはいけないと思います。
遺伝子研究は非常に難解なので、頭のいい人に任せてしまいたい気持ちはよくわかります。
研究者たちは日夜、病気や食糧難に苦しむ人々を救うために研究をしています。そして、研究の恩恵を受けるのはぼくたちです。
生物の遺伝子をどこまで操ってよいのか、安全に問題はないのかを議論しなければいけないのは、むしろぼくたちの方だと思います。
遺伝子組み換え技術
ところで遺伝子とはなんでしょうか。ざっくり説明しておきます。
遺伝子とは、生物の染色体の中に存在するDNAを構成するものです。
簡単に言ってしまうと、設計図の一部です。遺伝子にはさまざまな情報がつまっていて、これが組み合わさって生物の設計図となります。
遺伝子は親から子へ、受け継がれていくものです。自然界では通常、受け継がれる遺伝子は親同士の遺伝子を掛け合わせたものになります。
突然変異のような遺伝子の変化は極めて稀なケースです。
人類はかつて、同種族同士を掛け合わせながら、食品の品種改良を行ってきました。
遺伝子組み換え技術の発明によって、これが大きく変わることになりました。
人類は人為的に別の種族の遺伝子同士を交配させ、自然界では起こり得ない遺伝子の掛け合わせを強制させることができるようになりました。
研究者たちは長い年月をかけて、「どの遺伝子がどのような情報を担っているのか」分析し、人為的に遺伝子を掛け合わせた交配を続けてきました。
その結果、同じ食品なのにも関わらず、これまでとは違った特徴を持つ食品(遺伝子組み換え食品)が生産されるようになりました。
遺伝子組み換え作物について見ていきましょう。
よく耳にするのは大豆やとうもろこしといったところでしょうか。
スーパーで買い物をするとき、遺伝子組み換えでない食品を選んでいる人も多いと思います。
ここに大きな落とし穴が存在します。
遺伝子組み換え食品は家畜の飼料・油などに用いられています。そして醤油は遺伝子組み換え大豆を原料としても、「遺伝子組み換えでない」と表記する義務はありません。
とくに大豆は、その供給のほとんどを海外からの輸入に頼っています。
主な輸入国はアメリカ。
アメリカで生産される大豆の90%以上は遺伝子組み換え大豆です。
輸入された大豆から生成された醤油や、遺伝子組み換えされたトウモロコシをエサとする牛や豚のお肉は、いつもスーパーに並んでいるわけです。
つまり、ぼくたちは遺伝子組み換え食品を間接的に摂取しています。
もちろん、日本政府が安全かどうか審査した上で、許可された食品しか流通することはありません。
しかし、ぼくたちは遺伝子組み換え食品は本当に安全なのかを問い続けることが大切です。
メリット・デメリット
ここからは、遺伝子組み換え技術のメリット・デメリットについて考えましょう。
まずメリットとして代表的なものは、以下に挙げるようなものです。
・より栄養価の高い作物を作ることができる
・食品の生産スピードを飛躍的に早くできる
・害虫への抵抗性を持つ
上記のようなメリットがあれば、安定した食糧の供給が期待できます。農家からすれば収益も大きくなるでしょう。
養豚や養牛と営む人たちも、手頃に飼料が手に入るようになります。
こうしてみてみると、農業全体が活発にまわっているようです。
反面、デメリットは、
・人体に悪影響を及ぼす可能性がある。
遺伝子組み換え技術では、異なる種族同士の交配によって新たな遺伝子を生み出します。交配の際には意図しない遺伝子の変化がみられる可能性があります。
つまり、すべての遺伝子をコントロールするための技術ではないということです。
すべてをコントロールできず、予想しない副作用を引き起こす可能性も否定できないのです。
・生態系を破壊する可能性がある
身近なところでは、遺伝子組み換えによって害虫抵抗性を持つようになった農作物が挙げられます。
こういった農作物には、害虫にとって有毒な成分を植物に持たせることで、害虫を近づかせないための遺伝子組み換えが施されています。
こうした遺伝子組み換え施術が、生態系や地球環境にとって無害であるとは言い切ることができません。
最後に
専門用語は少なめにして、遺伝子組み換えの仕組みのところだけ紹介してみましたが、いかがだったでしょうか。
次回以降でお話するゲノム編集はもう少し踏み込んだ知識が必要になるので、頑張って分かりやすく説明したいと思います。
記事を読み終える前に、大切なことをもう一度確認しておきます。
・遺伝子操作に関する研究は大きくふたつ「遺伝子組み換え」、「ゲノム編集」
・遺伝子組み換えは「自然界では起こり得ない遺伝子の掛け合わせ」を強制するもの
・遺伝子組み換えは「すべての遺伝子をコントロールすることはできない」
次回以降はさらにディープな話をしていこうと思っていますので、この3つは押さえておいてください。
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